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サザンクロスツーリング:第58話
 投稿日 2002年06月04日(火)02時02分
 

 

10/14
今日はKununura〜FitzroyCrossing。
長い長い無給油区間のあるルート。
今日はこの旅始まって以来の大ハプニングの1日だった。

ユースを出発し相変わらずの国道1号線を西へ進む。
昨日Katherineを出てから本当に途中は何も無い。

TurkeyCreekで1回目の給油。
フィッシュとチキンとジュースで昼食。
ここでMikiちゃんのバイクのスターターが壊れた。
これが今日最後まで僕らを苦しめることになった。

どうもバッテリが悪いのか、セルモータが回らない。
ヘッドライトもウインカーも点かない。
しかも荷物満載の大きなバイクで、全く足の届かない
Mikiちゃんの力では、押しがけも出来るわけがない。
とりあえずここで修理できないのでユウイチ君が押しがけ。
ガソリンスタンド脇の砂地ではなかなかかからず、
荷物おろして国道まで持ってってなんとかかかった。

「ぜったいエンストすんなよ!」とMikiちゃんに言い、
足の届かないMikiちゃんを後ろから2人で支えて押し出す。
「そのまま行け〜。先に行ってていいから。」
汗だくだくのユウイチ君と僕。1人でなんとも動かせない
バイクを買っちまって、まったくどうしようもない奴だ。
と思いながらなんとも憎めないところがある。

すぐに追い付き、ユウイチ君、Mikiちゃん、僕の順で
西へ進む。それにしても何もない森が果てしなく続く。
暑さは相変わらずで体力的にもだいぶきつい。

やっとHallsCreekでちょっとした町。
ここからから先、舗装道路としては最も長い無給油区間。
朝から走って最初の町に着いただけなのに時刻は既に午後3時前。
先へ進むかここでキャンプするか悩む。
ユウイチ君と相談し、行けるところまで行って、
もし途中で暗くなってしまったらブッシュキャンプを
しようということになった。キャンプ場以外での野宿。
猛獣のいないオーストラリアとは言っても、アボリジニが来たり
野犬がいたりして、素人にはそれなりに危険と聞いている。
ここまで来る間、3人ともブッシュキャンプの経験は無い。

マジブッシュキャンプ、マジブだ!とか言いながら、
半分ワクワクしてブッシュキャンプに備えて水の補給。
たぶん必要は無いが、念のため予備のジェリ缶にも6L給油。
あくまで念のため、のつもりだった。。

15:00 HallsCreek出発。
僕以外は予備燃料を持っていないので、
燃費をかせぐため時速80〜90kmでゆっくり走行。
計算では燃料ギリギリでFitzroyCrossingにたどり着ける。
やがて日が傾き、ブッシュキャンプをしようと何度か思うが、
広すぎる荒野にユウイチ君も僕もなんだか心細くなってきて、
なんとかこのまま次の町まで行ってしまう気になっており、
停まるきっかけの無いまま暗くなってきてしまった。

しかし、停まりたくない時に停まらなければいけなくなった。
Mikiのバイクが思ったより早くリザーブに切り替わったんだ。
走りながらの切り替え作業もMikiには大変だった。
残り距離を考えると、遅かれ早かれMikiのバイクはガス欠する。
ユウイチ君と走りながら相談し、なら早めに入れてしまおうと
いうことでMikiに停止の合図。当然満足に停まれないMiki。
あのスタンドガッコン作戦は成功するのか。。。失敗した。
見事に転倒。まぁ予想通りだが。

なんとか僕のジェリ缶からMikiのバイクに給油完了したが、
あたりは完全に真っ暗になってしまった。給油中、たまたま
通りかかった車が心配して声を掛けてくれたりもした。
もうブッシュキャンプする気持ちの余裕も無ければ、
なんせ完全に真っ暗なので適当な場所も見付けられない。

給油後にまた走り出したが、そういえばMikiのバイクは
ライトも点かない。相変わらず考えの浅かった3人。
仕方がないのでトランザルプとGPZでMikiを両側から挟んで、
2台のライトで3台が並んで先を目指す。
道はずっと真っ直ぐ。3台並んで道幅いっぱいでも問題はない。

しかし今まで走ってきた2ヶ月で、こんな夜間走行は
ブリスベンの手前でやって以来まだ2回目。しかもあの時は
FreeWayだった。ここはフェンスも何もないHighWay。怖い。
ライト目がけて飛び込むカンガルーが心配で、
もう緊張感が目一杯過ぎて気持ち悪くなってくる。
国道1号の最長無給油区間も、残す100kmがつらかった。
下がらない気温で極度の脱水症状と極度の緊張感が続いた。

真っ暗な中、やっとやっと明かりが見えてきて、
19:00過ぎにFitzroyCrossing着。
ユウイチ君のGPZは直前数kmでリザーブになっていたらしいが、
TransAlpはこの区間をリザーブにならずに走りきった。
でも後半で少し飛ばしたせいか燃費は23km/L。あまり良くなかった。

疲れつつも町に着いて、安心しながらキャラバンパークへ向かう。
しかし途中に現れたちょっとしたダートでMikiが転倒。
僕が押しがけでエンジンをかける。
そうこうモタモタしていると、不気味なアボリジニが
声をかけてきた。言葉が通じないのでなんとなく怖い。
すぐに走り出す。でも暗くてよく見えず、
キャラバンパークを通り過ぎてしまい、Uターンしようとして
またしてもMikiが転倒。今度はユウイチ君が押しがけするが、
面倒くさいので荷物も降ろさず、そのまま無理矢理馬鹿力で
引っ張りまわして押しがけ。もう意地になっている。

さらにもう1回。やっとキャラバンパークの入口を見付けた
というところで、なぜかMikiが転倒。もうバイクはボロボロ。
Mikiもボロボロ。ユウイチ君も僕もボロボロだった。
もう押しがけの根性も限界まできて3人とも道に座り込む。
そのとき真っ暗な中で車が止まってくれて、
「大丈夫か、医者はいいか、ウチに泊まっていかないか」
と声を掛けてくれた。もう不信感も何も抱かずにお言葉に甘えた。

家に着いて水をもらい、ビールをもらい、夕食ももらい、
シャワーを浴びさせてもらって、Mikiも僕もユウイチ君も
なんとか復活した。脱水症状のような状態でむさぼるように
ビールを飲んだら、吸収しすぎて急性アル中にでもなるのか、
胸が苦しくなってやばかった。

僕らを拾ってくれたのは、金髪女性のジェーン。
ジェーンは恋人のマイクと一緒にこの町に住んでいる。
今はロングホリデイで帰省してきているらしい。
普段はPerthに住んでいる学校の先生だそうだ。

しかしいい人というのはいるもんだ。無料でここまでしてもらって、
感動するやら気が引けるやら。Mikiのお陰?と言えばそうかも
しれないが、とにかくこんなきつい日は初めてだった。

その後用意してくれたベッドルームでろくに話もせずに深く眠った。

*********************************************************
10/14 Kununura〜FitzroyCrossing
走行
664km
給油
9.90L(TurkeyCreek 202km)
10.02L(HallsCreek 168km) + 予備タンク 6.00L
12.80L(FitzroyCrossing 341km)
シドニーから
13434km
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