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「新型のココを是非見てほしい!【その5】」- 新型試乗レポート【10】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【最終回】

no11

すでに、全国のドリーム店を中心に、展示車・試乗車が配備されてきているようです。なので、この試乗レポートも今回で終わりとさせていただきます。
素人の拙い駄文ゆえ、読みづらいことも多かったと思います。改めてお詫び申し上げるとともに、最後までお付き合いいただきましたことを重ねて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

皆様のおかげで、ここ『日刊アフリカツイン』のFBページも大変な盛り上がりを見せております。その盛り上がりに便乗する形で、最後に一つ皆様に提案があります。

先日、今回の新型アフリカツインの開発者のお一方から、ある相談を受けました。
あくまでも「アフリカツインを愛する一人」としての提案でありお願いとして、です。

それは、
「アフリカツイン同士ですれ違った際に、
  手をあげるなどの合図=挨拶をして欲しい」
ということ。

皆様も昔ツーリングなど出先で、すれ違いざまに『ピースサイン』などで挨拶を交わした経験をお持ちの方も多いと思います。今でも夏の北海道では良く見られるシーンではありますが、それ以外ではほとんどお目にかからなくなりました。

その方が、市場調査のためにBMW R1200GS ADVに乗って『BMW Mottrad-Day』というイベントに参加した時のこと。すれ違うBMWユーザーが次から次へと手を挙げて挨拶をしてくれたことがとても感動的であり、暖かい気持ちになることができたそうです。
一つには、BMWの持つブランド力というのもあるかもしれません。しかしそれ以上に、オーナーによる相手への思いやりや愛を感じ、それがとても印象的であったと。

そしてこの機会に、自身の愛する『アフリカツイン』においても、そのブランドとオーナー同士の連体感を強め、今後も絶やさぬようにしていけたら、こんなに素晴らしいことはないと考えておられるようです。

昔からバイクとツーリングを愛するライダー同士が、無言で取り交わしたコミュニケーションの形。
それを今、アフリカツインオーナー同士が実践することで、『アフリカツイン』というブランド力の向上と、我々が率先して行うことでライダーのマナーアップに繋がれば、と考える次第です。

誤解を恐れずに言えば、『アフリカツイン』は少々趣味性の強いバイクではないかと考えます。
一目でわかるほどの愛嬌のあるフロントマスクと、威風堂々とした出で立ちが、このバイクのアイデンティティーでもあります。
そして、前から向かってくれば、思わず笑みがこぼれてしまうのは自分だけでは無いでしょう。
その相手への想いを、次は少しばかりのアクションで相手に伝えてみませんか?

ちなみに、ホンダの最近のコミュニケーションメッセージである「バイクが、好きだ。」のアクションとして、手のひらを相手に向けて親指を人差し指を立てる『Lサイン』というものがあるそうですよ。(^_^)
ピースサインはもちろん、手を挙げるだけでも良いと思います。

名車であるXRVも、新しいCRFも、みんな『アフリカツイン』であり、そのオーナーはそれを愛する『仲間』です。
そして、その『仲間』同士の繋がりを確かなものにするアクションとして、今回の新型デビューをきっかけにしていければとステキだと思っています。

柄にもなく、少々真面目な話で申し訳ありません。m(_ _)m
最後に、その方の言葉です。

「ツーリングですれ違ったアフリカツイン、街中ですれ違ったアフリカツイン、通勤でいつもすれ違うアフリカツイン。色々な場面があると思います。
旧型、新型問わず、挨拶を交わす事でアフリカツイン愛をもっと盛り上げたいのです。
そして、そのムーブメントはアフリカツインだけでなく、バイク全体に広がればなお良いと思っております。」

その想いは、アフリカツインを、そしてバイクを愛する我々と同じ気持ち。
もしご共感いただければ、明日からすれ違うアフリカツインを探すのが楽しく、そして嬉しいものになるかもしれません。
みんながアフリカツインで笑顔になる、そうなることをその方も自分も、心から願ってやみません。

(終)
2016/02/26 23:35

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「新型のココを是非見てほしい!【その5】」- 新型試乗レポート【10】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【10】

newat-repo-10-20160224-01

 

写真自体は地味なんですが、行き届いた配慮に感動。

『新型のココを是非見てほしい!【その5】』

ご覧の通り、『サイドスタンド』です。
駐車時に車体を支えるだけの機能部品ですが、実はこんなところにもRD07からの進化を見て取ることができます。

角断面になっているのが分かりますでしょうか?
そう、材質が鉄パイプではなく、アルミキャストになったのです!
しかも、側面には肉抜きまで施されるという徹底ぶり!軽量化への飽くなき執念を感じます。

そしてもう一つ、接地面に注目です。
車体横方向へ拡大され、不整地においてもスタンドがめり込みにくくなっているのです!
こんなところにも、オフロードバイクとしての矜持を垣間見ずにはいられません。

開発陣の方にこの話をしたところ、「お、気付いてくれました?」とばかりに鼻の穴が膨らんだような気がしました。(^_^)

ただし、このサイドスタンドには、ちょっとだけ不満がありました。
きちんと車体に沿って収納されるのはとてもスマートなのですが、張り出しが無さすぎて、オフロードブーツではスタンドが出し難かったのです。
角断面できちんと剛性確保したことで、スタンド自体がスリムになっており、ブーツの踵が引っかかるところが少ないのが原因でしょう。
スタンドの途中に足掛けのフックのようなものがあればベストなのですが、市販の汎用品は丸パイプのスタンドに対応させたものばかりで、新型のような角断面形状には合わないような気がしています。
そこそこ、車高の高い車両だけに、スタンドを出し損ねて立ちゴケというのは避けたいもの。
ここはちょっと改善をお願いしたいところであります。

とはいえ、隅から隅まで、アップデートの目が行き届いているこの新型。
まだまだ『隠しコマンド』的な要素がたくさんあるに違いありません。
それを見つけてニヤニヤするために、是非ともお近くのホンダ販売店へ!(笑)

2016/02/24 23:29
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「新型のココを是非見てほしい!【その4】」- 新型試乗レポート【9】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【9】

 

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今夜もちょっぴりマニアックに行きます!
『新型のココを是非見てほしい!【その4】』
新型のフロントブレーキは、対向4ポッドキャリパーがダブルで装着されています。
しかも、最新のトレンドにならって、フォークボトムブラケットにラジアルマウントでの取り付けとなりました。
これにより、絶対的な制動能力とコントロール性の向上が図られたことは間違いないところだと思います。
それについて一点気になったので、質問してみました。
「RD07は片側2ポッドキャリパーでしたが、今回の4ポッド化によってむしろバネ下重量は増えてしまったのでは?」との問いに対し、足回りの担当者いわく、
「確かにキャリパー単体での重量は増えています。ただし、RD07のピンスライドタイプはキャリパーのマウントプレートが必要なので、トータルではあまり重量差はないんです。」とのこと。
さらに、「今回フロントハブを随分と小型化しましたので、バネ下はむしろRD07よりも軽くなっています!リヤハブもダンパーを内蔵しながら、こちらもハブ軸をスリム化して軽量化しています!」だそうです。
確かにキャリパーなどの固定物よりも、回転体であるハブの軽量化の方が、バネ下重量はもちろん、操安性向上に効果は大きいはずです。
いやはや、微に入り細に入り、行き届いたアップデートに脱帽するしかありません。
実際、オフロードコースにMT車でコースインした時も、前後ホイールの路面追従性は高かったです。
また、リヤのバネ下にパーキングブレーキ用キャリパーが追加されるDCT車においても、ギャップなどにおけるバタ付きなどは自分レベルでは全く気になりませんでした。
そろそろドリーム店などの大型店舗では、展示車や試乗車が出回り始めている様子。もうすでに実車をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
見るだけでなく試乗までしてしまったら、物欲に火が着くのを止めるのは難しいです。
どうか、『印鑑』『通帳』『住民票』の『3種の神器』は、くれぐれもお持ちになられず、冷静にご検討なされることをオススメします!

 

2016/02/24 00:00
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「新型のココを是非見てほしい!【その3】」- 新型試乗レポート【8】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【8】

newat-repo-08-20160222-01

新型アフリカツインの発売日を記念して、もう一本上げちゃいましょう!

『新型のココを是非見てほしい!【その3】』

今回国内仕様としてデリバリーが開始されるカラーリングは3色。
ダカールチャレンジの象徴としての『ヴィクトリーレッド(CRFカラー)』。
都会的なシックで落ち着きのある『デジタルシルバーメタリック』。
そしてもう1色が『パールグレアホワイト(トリコロール)』です。

中でも、『CRFカラー』と『トリコロール』は、今回のアフリカツインブランド再興における象徴的なカラーリングであり、特に『トリコロール』については並々ならぬ思い入れを持ってカラーリング決定がなされたそうです。

今回の試乗会における紅一点のカラーリングデザイナーに、「今回の『トリコロール』ですが、『RD03』とは色味が違いますよね。」と伺ったところ、
「『アフリカツイン』においては、『トリコロール』はやはり特別な意味を持つ色。今回のブランド再興においては、絶対にこの色は外せませんでした。15年の時を経て復活するアフリカツインですから、やはりカラーリングにも上質感が欲しかった。なので、ベースのホワイトはパール塗装としています。あわせて『トリコロール』の配色を以前よりも濃いものとすることで、ベースカラーとのバランスと落ち着き感を出しています。」とのこと。

さらに話は続きます。
「『トリコロール』の車体色にもう一つ欠かせないものがあって、それがゴールドのハンドルバーとホイール。生産性だけ考えたら他の2色と同じくブラックで統一したほうが良いんですが、ここだけは絶対譲れない!ということで採用してもらいました!」

嗚呼、なんという『アフリカ愛』でしょう!(ToT)
我々のココロのツボをとても分かっていらっしゃることに、感動せずにはいられません。

また、車体デザインを担当された方にも話を伺いましたが、「2眼式のヘッドライトはもちろん、この角度から見たときのタンクの膨らみこそが、アフリカツインのアイデンティティーである。」と。
これまた、泣かせる話じゃないですか。(ToT)

エンジンや車体はもちろん、デザインまでも。アフリカツインの進化において、絶対に忘れてはならないのは『アフリカツインらしさ』であると、開発陣の誰もが言い切っていたのがとても印象的でした。

この試乗会で、何度か本気で泣きそうになったのは、ここだけのハナシにしておいてください。

2016/02/22 23:30
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「新型のココを是非見てほしい!【その2】」- 新型試乗レポート【7】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【7】

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今日はマニアックな視点でひとつ。

『新型のココを是非見てほしい!【その2】』

アフリカツインが『オフロードバイク』であるならば、標準のオンロード重視のタイヤからよりオフロード寄りのブロックタイヤへと履き替えられる方もいらっしゃるはず。
自分も以前RD07でダート走行を楽しんでおりましたが、その時にちょっとだけ気を付けていた事があります。それは、

『フロントフェンダーとタイヤのクリアランス』。

RD07の場合、フロントタイヤを包み込むようなフェンダー形状となっていたため、ブロックハイトの高いタイヤを履いている時にマディ路面で泥を噛むと、フェンダー内側にタイヤが擦れる事がありました。
これはどうやら自分だけでは無かったようで、ダート走行頻度の高いオーナーは、XL600V Transalpのフロントフェンダーに交換したり、さらにそれにステーをかませてクリアランスを増やしたり、と一工夫していたのを思い出しました。

今回の新型アフリカツインは、画像のようにフェンダーとタイヤの間に約3.4cmものクリアランスを確保。
しかも、様々なブロックタイヤを履いてテストを行うことで、フェンダーとの干渉については問題無いことを確認済なのだとか。

ちなみに、今回のオフロード走行用試乗車のタイヤは、『Continental TKC80 Twinduro』。
開発の方に、「何故このタイヤを?」と伺ったところ、「いろいろ試してみた上で、これが相性が良かったので」との回答が。
開発において、ダートでも相当走りこまれているようです!

どこまでも『オフロードバイク』として開発された今度の新型は、本日(2016/02/22)より発売開始です!
気になる方は、今すぐ店頭へ!

2016/02/22 22:18
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「新型のココを是非見てほしい!【その1】」- 新型試乗レポート【6】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【6】

ここからは、トピック的なディテールを、開発者のコダワリコメントとあわせてご紹介していきます。

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『新型のココを是非見てほしい!【その1】』

コックピット前方にそそり立つスクリーン。
これがなかなかに複雑な形状をしています。

テストの際に、プロジェクトのまとめ役がフルフェイスヘルメットで試乗しようとした際に、開発者が一言。

「このバイクはオフロードバイクなんですから、バイザー付きのオフロードヘルメットで評価してくれないと困ります!」

そしてその方は、慌ててオフロードヘルメットを買いに走ったんだとか。

開発者のコダワリとして、「バイザー付きのオフロードヘルメットでも、直進時はもちろん左右にバイザーを振った時でも風で煽られない形状にしたかった」そうです。
中央に大きく開けられた通気口や、フロントカウルとの間にある隙間など、これらは徹底的にテストを繰り返した結果です。

是非とも試乗して、体験してみてください!

※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。

2016/02/21 22:58

「RD07からの進化を、スペックデータから考察する」- 新型試乗レポート【5】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【5】

 

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試乗記だけで簡潔に全てを伝えきれないのは、自分の未熟さゆえお許しを。
(そして、今回も長文です。読みづらくて申し訳有りません)

『RD07からの進化を、スペックデータから考察する』

一部は試乗記の中でもお伝えしましたが、RD07の生産終了から15年という時を経てリリースされた今回の新型は、全てにおいてアップデートがなされていると考えて差し支えないと思います。
自分、以前はカタログを眺めては馬力やらシート高など、数値を比較・検討して一人楽しむという、ありがちなスペックオタクでした。(一応過去形にしておきます)
ということで、今回のアフリカツインにおいてもスペックの数値からちょっと考察してみたいと思います。

まずスペックデータの最初に出てくる【型式】ですが、今回の新型は『SD04』。おや、どこかで聞いたことがありませんか?
そう、2型のアフリカツインの型式が『RD04』でしたので、それと一文字違いという何たる偶然。ちなみにホンダ車の型式番号は、最初のアルファベットは確か排気量区分だったかと思います。(『R』は750ccクラス、『S』は1000ccクラスだったはず)
そして、エンジン型式に至っては『SD04E』となっており、RD04・RD07に搭載されていた『RD04E』とこれまたそっくりです。
ニヤリとしてしまったのは、自分だけでは無いはず!と勝手に信じて次に進みます。

3寸法(全長・全幅・全高)と軸間距離については、いずれも新型が少しだけ大きくなっています。とはいえ、これは見た目ほどの違いはありません。
視覚的にそそり立つように見えるスクリーンですが、これはアッパーカウル前端部の位置が後退したことで、それに伴いスクリーンの角度が起きているため。
そして、最低地上高(グラウンドクリアランス)ですが、これがRD07の195mmに対して新型はなんと250mm!これにより、アンダーガードのグラウンドヒットや、フロントタイヤの巻き上げた石でアンダーガードが派手な音を奏でることも少し減るかもしれません。

シート高は同値の870mmですが、先日お伝えしたようにシート前端部がスリムになった新型は、さらに足付きが良くなっています。さらには工具無しで20mm下げることができるため、街中における足付きの不安感もさらに解消されることでしょう。
しかも!オプションではありますが、今回はさらに低いローシートも用意されており、ノーマルから30mmダウンとなります。一番低い状態では820mmとなることで、「これなら乗れるかも!」と思える方が多いに増えると思われます。
ちなみに比較としては、CRF250Lのシート高は875mm、ヤマハのセロー250では810mmとなっていますので、決してアフリカツインのシートが高いわけでは無い事がお分かりになるかと思います。

燃料消費率においては、60km/hの定置燃費ではRD07の25.2km/Lに対し、新型はなんと32.0km/Lと250ccの排気量拡大にもかかわらず、25%の燃費向上を果たしています。
そしてこの結果を受けて、フューエルタンク容量が23Lから18.8Lとサイズダウンしながらも、400kmの航続距離を確保しているのだそうです。(カタログ上は18Lと表記されていますが、開発者から欧州と同容量となる18.8Lと伺っています)

タイヤサイズは、フロントが90/90-21とRD07と同サイズですが、リヤが150/70R18と『オフロードバイク』としては一般的となるF21・R18インチとなっています。
標準装着のリヤタイヤはラジアルですが、前後共チューブタイプとなっています。
開発陣に「KTMの1190ADV-Rは同サイズでもチューブレスですが、なぜチューブタイプを採用したんですか?」と伺ったところ、「オフロードバイクだから、林道などでパンクした時にチューブの方が対処しやすい。また、山奥などでのパンクにおいても、チューブならばちゃんと帰ってこられる可能性が高いから。」なんだとか。一体、新型は我々をどこまで連れて行くつもりなのでしょうか。(笑)
いずれにしても、1990年頃にモトクロッサーのリヤタイヤが、軽快感やダイレクト感、トラクション向上などを求めて18インチから19インチにサイズアップされたように、今回の新型も17インチから18インチに変更されたことで、非常に軽快感のある走りが楽しめました。
90扁平の17インチだったRD07も、接地感の高さや乗り心地の良さというメリットを持っていたと思いますが、新型の現代的なハンドリングはこのタイヤサイズも一役買っていると考えて間違いないでしょう。

車両重量ですが、RD07では乾燥重量207kg、車両重量234kgでした。車両重量は、現在の装備重量と同じと考えてよいと思います。
そして新型ですが、MT車で232kg(!)、DCT車で242kg。驚いた事に装備重量ではRD07よりも軽いという衝撃の事実!もちろん、タンク容量の差もありますが、それでも「乾燥重量はほぼ同等である」と開発陣が話しておりました。
ちなみに、KTMで一番ホットなトラベルエンデューロである1190ADV-Rは、半乾燥重量で217kg。これには23Lの燃料は含んでおらず、ガソリンの比重が0.72?0.76であることを考えると、装備重量では233.56kgとなり、新型アフリカツイン(MT車)のほうが少しだけ軽い!という結果に。(ガソリン比重0.72として換算。23L×0.72=16.56kg)
もちろん、1190ADV-Rは150PSというハイパワーエンジンを搭載していますので、それを受け止める車体がアフリカツインより強靭であることは想像に難くありません。
とはいえ、「READY TO RACE」を標榜するメーカーのホットバージョンと同等の重量と考えただけで、ちょっとワクワクしてしまうのは恐らく自分だけではないでしょう。

最後に今回の新型において、自分的にかなり驚いたのは【変速機】です。
実はRD07の『5速』に対し、新型は『6速ミッション』を搭載してきたのです!
排気量拡大に伴いトルクが拡大されたことにより、ワイドレシオ化と同時に変速段数を減らす。実際、ヤマハのセローが225ccから250ccになった時に、ミッションが6速から5速とされています。しかし、段数が減ることでシフトダウンにおけるギア比の変動が大きくなり、林道や荒れた路面においてはリヤホイールのロックなどに気を遣うことにもなるかと思います。
事実、RD07の5速レシオもかなりワイドな設定となっており、オンオフタイヤでは林道などでリヤを振ってしまうことが少なからずあったとを記憶しています。(もちろん、自分の腕が未熟であることも大きいのですが。)
新型は6速ミッションとすることでギア比の変動幅を小さくし、さらにスリッパークラッチと組み合わせることで、リヤホイールをロックしにくく路面追従性を高めていることが考えられます。
タイヤがホッピングせずに路面に追従していれば、当然リヤブレーキの効力が効率的に減速へ繋がります。
そして、変速段数を増やしながらも、RD07とクランクケース幅を同サイズに収めてくれたことに、スペックオタク(笑)としては感動を禁じえませんでした。

いずれにしても、様々な進化を遂げているであろうことを、乗る前から妄想し続けておりましたので、今回の試乗会においてそれが確証に変わったことがとても嬉しかったです。
と、それを伝えたかったためだけに、ここまで長い駄文となってしまったことをお詫び申し上げます。
次回はもう少しコンパクトに。。。(反省)

(それでも続く)

※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。

「もちろんオンロードもイケるよね?」- 新型試乗レポート【4】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【4】

no04-20160219

『オフロードバイク』ということで、ダートでの試乗記に熱くなり過ぎてしまった自分にちょっと反省。

「もちろんオンロードもイケるよね?」

オンロードでの試乗は、DCT車の割り当てでした。コースは、ここモトスポーツランドしどきをスタートして林道・県道を通り、高速道路を一区間走ってくるという1時間ほどのもの。
オフロードコースでの試乗ですっかりDCTに信頼をおいた自分は、モードセレクターを迷うことなく『Dモード』に。「オンロードでの試乗だから」ということで、トルコンは介入度の高い『レベル3』を選びました。
出発してすぐに鋭角に右へ折れると、すぐに林道に突入。てっきり舗装林道だと思っていたら、これがちゃんとダートでした。ヒルクライムということでスロットルを開けた瞬間に、トルコンがフル介入。(こればっかり) 今回も『レベル1』に介入度を下げました。

タイヤがオンロードを重視した標準装着品なので、ダートでの無理は禁物。しかしそういう時こそ、上りではトルコンが絶妙な効きを示してくれます。山の稜線に沿って緩やかにアップダウンを繰り替えすダートでも、DCTはそれを知っているかのように自然な制御をかけてきます。上りであればミッションをホールドし、下りに入れば自動的にシフトダウン。コーナー進入に向けてブレーキをかければ更にもう一段落とす。これほど走りに集中できるDCTは、先の分からないツーリングでこそ効果を発揮するものと思われます。ますますMT車を予約した自分の判断を少しばかり恨んでみたりもしますが、そこは『乗りこなす楽しみ』がたっぷり残されているとポジティブに捉えることにします。

閑話休題。
試乗車で転ぶのは絶対にマズイと考えていたので、林道でもABSを入れたままで問題ない速度で走っていました。しかし、右コーナーを曲がったところでそこに見えたのは、路面いっぱいに広がる雪と氷の世界。フロントのABSはカットできないので、前後ともABSが効きっぱなしでアイスバーンに突入。さすがに一瞬リヤが大きく振り出されて肝を冷やしましたが、左足で路面を蹴って姿勢を回復。事なきを得ました。ロング化されたスイングアームが、挙動を穏やかにしてくれたのでしょうか。そして、RD07と同じ870mmのシート高にもかかわらず、シート前部がスリムな形状となっているので足が付きやすかったことも功を奏した形です。

ちなみに、今回の新型はフロントブレーキにラジアルマウントの対向4ポッドキャリパーをダブルで備えています。組み合わせられたフローティングのブレーキローター径は310mmと、最新のロードバイクのコンポーネントに引けを取りません。にもかかわらず、ダートにおいても効き始めは非常に穏やかで、握るにしたがって効力が増してくるような設定になっています。これも、アフリカツイン用に専用チューニングされたものとのことで、ピストンシールなどに専用の味付けがなされているのだとか。どこまでも『オフロードバイク』として作りこまれた新型に、惚れ惚れとせずにはいられません。

林道を抜けて県道まで下りると、気持ちの良い中速コーナーを左右に切り替えしていきます。ここでも、フロントタイヤ位置がライダー側に近づいた恩恵として、非常に自然なハンドリングとフロントからのインフォメーションを感じることができます。従来21インチタイヤでは少し遠回りするような印象を持つこともありましたが、今回の新型のパッケージングがロードバイクほどクイックではないものの、それを自然に感じさせてくれるのだと思います。
ちょっとしたストレートでスロットルを大きく開けてみましたが、これがまた弾けるような速さです。まさかアフリカツインに乗っていて、ここまで『痛快な加速』を味わうことができるとは思いませんでした。ヘルメットの中で、思わず笑ってしまったのはここだけの話です。

また、新型は排気音がまた最高なのです。Vツインからパラレルツインになったにも関わらず、不等間隔爆発とすることにより、サイレンサーから吐き出される音は正にアフリカツインの『それ』。これだけでXRVオーナーであれば、思わず笑みがこぼれることでしょう。そして、サイレンサーエンドの位置がRD07よりも高く引き上げられたことで、より迫力のあるエキゾーストノートが楽しめます。
ちなみに、欧州向けのフルパワー98PSに対し、国内仕様は92PSと少々抑えられていますが、その味付けはサイレンサーの上下テールパイプ径を一回り絞っているからだとか。この差を体感できるとすればトップエンドのみで、中低速域に関してはフルパワー仕様となんら遜色は無い!と開発陣が太鼓判を押していた事をここに記しておきます。

実は試乗コースを間違えて、高速道路に乗り損ねてしまったのが心残りです。開発者から「新型の防風性能を是非体験してみて下さい!」と言われていたのですが、高速道路において試すことが出来ませんでした。県道のストレートで少し大きくスロットルを開けてみましたが、バイザーの付いたオフロードヘルメットでも一切振られることはありませんでした。もちろん完全に風を遮るのではなく適度に当たるのですが、スクリーン下部に空気の通気口を設け、スクリーン外側と内側の圧力差を少なくすることで、空気の流れを調整しているのだそうです。

夕方ともなれば2月の福島はさすがに寒く、モトクロスグローブで公道試乗に出てしまったことを激しく後悔しましたが、オプションのグリップヒーターが装着されていたことでとても助かりました。ホンダ純正用品であるこのグリップヒーターは、グリップ径が通常のグリップとあまり変わらないため、操作性を犠牲にしていないのが特徴です。贅沢を言ってしまえば、オフロードバイク用として、もう少し滑り止め効果の高いグリップパターンのものも用意されると良いと思います。とはいえ、擦り減ってしまった場合はヒーターユニット一体の交換となるので、コスト的に現実的ではありません。滑りにくさと耐摩耗性のバランスを考えたときには、現状のものがベストなのかも知れません。

無事に試乗車を返し終え、自分のような素人に対しても開発者の方々が様々に感想を聞いてきます。新型の素晴らしさに感動しっぱなしで特に不満などあろうはずもないのですが、なるべく多くの方に『わが子』の印象を聞かせてほしいのでしょう、そこに開発陣の新型に対する思い入れと愛を感じずにはいられませんでした。

今回の試乗会は、たまたま自分が日刊アフリカツインのメンバーとして参加させていただきましたが、皆様におかれましても何はともあれ一度はこの新型アフリカツインを体験されることを強くお勧めいたします。ご自身の『アフリカ愛』が深ければ深いほど、それに比例して感動の度合いが大きくなること間違いなしです。その上で、財布のひもが緩んでしまったり、ローン用紙に捺印するような結果になったとしても、当方は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承くださいませ。
ただし!試乗に当たっては、その誘惑を断ち切るには強い覚悟をもって臨む必要があることを、予めお伝えしておきます。

取り急ぎの試乗レポートとしては、今回にて終了となります。駄文ではありますが、最後までお読みいただきましたこと、心より御礼申し上げます。

(でも、まだ続く)

※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。

 

「ところで、走りはどれだけ進化してるの?」- 新型試乗レポート【3】

■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【3】

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前回のレポートの際にミッションの印象を中心に語りましたが、今回のテーマはこれです。
「ところで、走りはどれだけ進化してるの?」

RD07の最終型が生産終了して15年。その間に、バイクの基本パッケージもいろいろと様変わりしています。今回の新型アフリカツインにおいても、『フューエルインジェクション化』と『ABSの採用、』『電子制御の採用』があげられます。特に『電子制御の採用』による走りの変化は大きく、一番のトピックはもちろん『DCT』ですが、『セレクタブルトルクコントロール(以下トルコン)』もオフロードでの走行性能に大きな影響を与えていると考えられます。

最初の試乗枠では、オフロードコースをMT車で走りました。『ABS』については後輪側だけはスイッチでカットできるので、当然OFFに。『トルコン』がメインキーON時は初期設定値の介入度が最大の『レベル3』となっているので、まずはそのままコースに乗り入れました。

コース自体はドライコンディションだったのですが、入り口付近に一部ぬかるみがあり、慎重に徐行で進入したにもかかわらずスロットルオンでトルコンがフル介入。「絶対に空転させない!」という強い意志(笑)を感じましたが、さすがにこのままではオフロードは走れません。

『レベル1』に介入度を下げてコースに入ります。このレベルであればかなり自然な効き具合となり、そこそこ開けてもしっかりとレスポンスよく車体が前に進みます。
試乗会場である『モトスポーツランドしどき』の土質は、山砂を中心としたサンド質。ここまでのドライ路面であれば、トルコンは『OFF』にしても問題なかったと思います。

そして、何よりも速い!

RD07比でパワー・トルクともに約1.6倍。にも関わらず、RD07の車両重量234kgに対して、新型(MT車)の装備重量はなんと232kg!排気量が33%大きくなっているのに、車体は軽くなっているという驚異のパッケージングに、開発陣の意地を見た思いです。これで遅いわけはありません。。(タンク容量が4.2L減っていますので、乾燥重量という点ではほぼイーブンとのこと)

しかし、オフロードはエンジンパワーだけで走るものではないのは、皆様ご承知のはず。それを活かす優れた車体があってのことです。
今回のレポートに貼っている画像は、このコースのフィニッシュ地点にあるジャンプの着地シーンになります。これは決して後ろが跳ね上げられてのものではなく、このバイクなら大丈夫との確信のもとにフロントから着地させています。

ビッグオフの場合、エンジンや燃料の重さからフロントヘビーになりがちなので、意図的に後輪から着地させる事が多いと思いますが、新型は安心してこの姿勢で着地できるのです。シャシーと足回りがどれだけしっかりしているのか!その感動が少しでも伝われば幸いです。

ホイールベースはRD07比でプラス20mmとなっていますが、スイングアームピボットからフロントのアクスルシャフトまでの寸法は逆にマイナス8mmとなっており、その分スイングアーム長が伸びています。ライダーからフロントタイヤが近く感じられるようになったことで、コーナリング時におけるフロントタイヤのグリップ感や路面からのインフォメーションが掴みやすくなっていると思われます。

また、倒立化されたフロントフォークのインナーチューブ径は45mmとなっており、プリロードを含む伸び圧減衰とあわせてフルアジャストが可能となっています。
技術説明で伺ったところによれば、43mm径も検討されたそうです。しかし、足回りの開発担当の方が「アフリカツインはオフロードバイクだから、45mmじゃなきゃダメなんです!」と熱く説得されたのだとか。その方、Bajaなどにも多数参戦されている、エンデューロ業界では『チカチカさん』の愛称で呼ばれるオフロードエンスージャスト。そういう方の熱意があって、エンジンを活かす車体設計が出来上がったと言えるでしょう。

その足回りが取り付けられる骨格であるメインフレームも、変形したオーバル形状となっており、RD07に対して縦方向でほぼ1.5倍の幅を持つ強靭なものとなりました。そのフレームにエンジンを固定するためハンガーは、なんと6箇所。それだけしっかりとしたフレーム部材だからこそ、前後フルアジャスタブルとされた足回りが素晴らしい仕事をしてくれるのだと思われます。

サスペンションストロークは、フロント230mm・リヤ220mm。ちなみに数値上ではありますが、KTM 1190ADV-Rのサスストロークは前後ともに220mm。この事から、今回のアフリカツインがどれだけオフロードパフォーマンスを重視したのかを、垣間見る事ができます。

このしどきのコースには、スタート直後に大坂上りがあり、そこも走らせていただきました。3速でそこそこ開けたつもりですが、途中にできた砂の轍を横切る際にも、ロング化されたスイングアームがしなやかに追従し、リヤ回りが暴れる事はほとんどありませんでした。

1段目を登ったところで右からショートカットして下りるコース設定とされていましたが、本来のコースであれば2段目を上りきるところでそこそこ飛べるレイアウトでしたので、是非ともそこをこのバイクで走ってみたかったところです。

途中でDCT車にも試乗できましたが、先般のレポートに書かせていただいたように、MT車と全く遜色なく走る事ができたのには大変驚きました。

(続く)

※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。

「そもそも、アフリカツインに『DCT』ってアリなの?」- 新型試乗レポート【2】

新型アフリカツイン 試乗レポート
 『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【2】

「そもそも、アフリカツインに『DCT』ってアリなの?」

no02-20160217

次はやっぱりコレでしょう。今回は長文です。m(_ _)m

「そもそも、アフリカツインに『DCT』ってアリなの?」

『DCT(Dual Clutch Transmission)』について、詳しくは下記URLをご覧ください。
http://www.honda.co.jp/CRF1000L/movies/200.html

四輪では国内・海外メーカーが2ペダルMTとして様々なモデルを発売しているのはご存じのとおりです。ポルシェや日産GT-Rのようにスポーツ用途に振ったものもあれば、小気味よく走れるスモールカーに採用されているものもあり、すでに技術として定着しています。しかし、これが二輪となるとホンダ一社のみ。その独自技術を、新型アフリカツインにも搭載してきたわけです。

『DCTモデル』と『MTモデル』では、10万円・10kgの差があります。誤解を恐れずに言えば、新型を検討するXRVオーナーにとっては、10万円の差は長い目で見ればそれほど大きな問題ではないのかもしれません。しかし、アフリカツインを『オフロードバイク』として捉えたときに、10kgの差は数値的に無視できない。自分もそう考えている一人です。

試乗会において、最初に自分はMT車でオフロードコースに入りました。その時の新型の進化ぶりには圧倒されたのですが、その話はまた改めて。そして、たまたまDCT車が空いていたため、そちらにも同じコースで乗ることができました。二度三度と左足がペダルを探して空振りしたのはご愛嬌。しかし、左手が一度もクラッチレバーを探したことはなかったのです。これが何を意味するかといえば、「半クラッチの必要性を一切感じなかった」ということ。ビッグオフでダートを嗜む方であれば、進行方向に伸びるぬかるんだワダチには多少なりとも緊張を強いられるものと思います。また、タイトなヘアピンコーナーでは、立ち上がり加速に向けて軽くクラッチに指をあてる方もいらっしゃるかと。しかし、今回のDCT仕様においては、驚いたことにその気遣いは完全に不要でした。
さらに、もっと意地悪なシチュエーションとして、極低速でのフルロックターンを試してみたところ、これも問題なくクリア。ちなみに新型のハンドル舵角は、RD07の左右40度に対して左右43度と、倒立フォークを採用したにもかかわらず増えているのですから、どれだけの小回りかご想像いただけるかと思います。DCTのクラッチが繋がるタイミングについては最初慣れがいるかもしれませんが、丁寧なスロットル操作を心掛ければ問題ないでしょう。リアブレーキを軽く引き擦って速度調整するという基本は、MT車でも同じことです。

DCTの物理的メリットは、次のギアが常時スタンバイにあることによる、シフトショックとタイムラグの最小化といえます。駆動トルクの変動が小さければ、その分安定したオフロード走行が可能になります。先のわかっているオフロードコースはもちろん、これは林道走行においても一つの安心材料になります。また、アフリカツインのDCTは、スロットル開度・速度などの変化度合いから、そこが上りなのか下りなのかを想定してくれます。結果、上りでは低いギアを保ちながら力強い加速を、下りではATモードであっても理想的なシフトダウンによるエンジンブレーキをと、ライダーの心理にそった制御をしてくれます。

ダートでメリットが体感できるのなら、舗装路ではDCTの存在を忘れてしまいます。以前NM4-02というバイクでDCTを体験してはいましたが、ちゃんと乗るのは初めてに等しい自分が全く意識することなくDCTの恩恵を受けまくっていました。実は、オフロードコースも林道も、走ることに集中しているとDCTの『MTモード』の存在を忘れてしまい、一度もシフトアップダウンのスイッチに触ることはありませんでした。DCTにはスポーティーなシフトスケジュールに切り替わる『Sモード』もあり、ライダーの好みに応じて3種類から選ぶことができるのですが、『Dモード』でも十分すぎるほどに頭が良いです。
ソロはもちろん、タンデムライディングや渋滞のときにおけるDCTの快適性・利便性は計り知れないものがあるといえるでしょう。スロットルバイワイヤ(電子制御スロットル)やクルーズコントロールなどを装備していないアフリカツインが、敢えてDCTを採用したという事実。これは「オフロードでも最適化されたDCTである」ことの証明とも言えるでしょう。

DCTの話が長くなりましたが、MT車の進化もあなどれません。並列2気筒になったにもかかわらず、XRVと変わらないクランクケース幅で収めています。また、『アシストスリッパークラッチ』を採用することにより、クラッチレバーの操作過重が20%軽くなっているそうです。どのくらい軽いかというと、普段コースで乗っているYZ250FXと同じく、オフロードコースにおいて常に人差し指1本でクラッチを操作出来ます。半クラッチからの繋がりも掴みやすく、とても洗練されていました。乗りこなす楽しみを求めてMT車を選ぶ、というのも正しい選択だと思います。

オフロードでも全く違和感のないDCT車の仕上がりを体感したことで、正直少しだけ悔しい思いを抱いたことをここに白状します。実はすでにMT車を注文しておりまして、アフリカツインとDCTの相性に懐疑的だった自分は、良い意味ですっかり裏切られた形となったからです。物理的な10kgの差についても、今回の試乗において自分には体感できませんでした。子供とのタンデムツーリングを楽しむ自分としては、舗装路におけるメリットだけを考えたら、DCTを選ばない理由は無かったかもしれません。とはいえ、操作の軽いクラッチは、MT車を操る楽しみを倍加してくれることでしょう。

ちなみに、現時点の予約段階において、MT車とDCT車の比率はほぼイーブン。欧州においては、DCT車のほうが売れているとのことです。そして、われわれと同じく『アフリカ愛』に溢れた新型開発チームにおいては、DCT車のほうが購入者が多いとのこと。それだけに、DCTへの絶対の自信が伺えました。

どちらを選ぶか悩みの尽きない新型アフリカツインですが、例えばこう考えてはいかがでしょう。MT車は『新型の』アフリカツインを求める方に、そしてDCT車は『新世代の』アフリカツインを求める方のために。ミッションの違いを置いたとしても、新型のパッケージングがRD07から大きく進化しているのはすぐに体感できるものです。純粋なアフリカツインの良さを体感するには、プリミティブな操作が求められるMT車のほうが奥深さを味わえるように思いました。かたやDCT車は、「新たなオフロードバイクの未来像」をホンダが提示してくれたものと捉えています。進化のベクトルは同じでも、飛躍の仕方と方法論が違う。従来のXRVオーナーであれば、MT車を選ぶことは決して間違いではないだろうことは、ここに述べさせていただきます。

最大の功罪は、「ホンダがアフリカツインに、2種類のミッションを用意したこと」。本当に何という事をしてくれたのかと!待ちくたびれるほどに待ち焦がれた皆様を、とことんまで悩ませる選択肢を用意してくれたホンダに、感謝以上に恨み節が出そうです。(苦笑)

(続く)

by 内田さん

※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。

2016/02/17 17:02 初出