「ところで、走りはどれだけ進化してるの?」- 新型試乗レポート【3】


■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【3】

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前回のレポートの際にミッションの印象を中心に語りましたが、今回のテーマはこれです。
「ところで、走りはどれだけ進化してるの?」

RD07の最終型が生産終了して15年。その間に、バイクの基本パッケージもいろいろと様変わりしています。今回の新型アフリカツインにおいても、『フューエルインジェクション化』と『ABSの採用、』『電子制御の採用』があげられます。特に『電子制御の採用』による走りの変化は大きく、一番のトピックはもちろん『DCT』ですが、『セレクタブルトルクコントロール(以下トルコン)』もオフロードでの走行性能に大きな影響を与えていると考えられます。

最初の試乗枠では、オフロードコースをMT車で走りました。『ABS』については後輪側だけはスイッチでカットできるので、当然OFFに。『トルコン』がメインキーON時は初期設定値の介入度が最大の『レベル3』となっているので、まずはそのままコースに乗り入れました。

コース自体はドライコンディションだったのですが、入り口付近に一部ぬかるみがあり、慎重に徐行で進入したにもかかわらずスロットルオンでトルコンがフル介入。「絶対に空転させない!」という強い意志(笑)を感じましたが、さすがにこのままではオフロードは走れません。

『レベル1』に介入度を下げてコースに入ります。このレベルであればかなり自然な効き具合となり、そこそこ開けてもしっかりとレスポンスよく車体が前に進みます。
試乗会場である『モトスポーツランドしどき』の土質は、山砂を中心としたサンド質。ここまでのドライ路面であれば、トルコンは『OFF』にしても問題なかったと思います。

そして、何よりも速い!

RD07比でパワー・トルクともに約1.6倍。にも関わらず、RD07の車両重量234kgに対して、新型(MT車)の装備重量はなんと232kg!排気量が33%大きくなっているのに、車体は軽くなっているという驚異のパッケージングに、開発陣の意地を見た思いです。これで遅いわけはありません。。(タンク容量が4.2L減っていますので、乾燥重量という点ではほぼイーブンとのこと)

しかし、オフロードはエンジンパワーだけで走るものではないのは、皆様ご承知のはず。それを活かす優れた車体があってのことです。
今回のレポートに貼っている画像は、このコースのフィニッシュ地点にあるジャンプの着地シーンになります。これは決して後ろが跳ね上げられてのものではなく、このバイクなら大丈夫との確信のもとにフロントから着地させています。

ビッグオフの場合、エンジンや燃料の重さからフロントヘビーになりがちなので、意図的に後輪から着地させる事が多いと思いますが、新型は安心してこの姿勢で着地できるのです。シャシーと足回りがどれだけしっかりしているのか!その感動が少しでも伝われば幸いです。

ホイールベースはRD07比でプラス20mmとなっていますが、スイングアームピボットからフロントのアクスルシャフトまでの寸法は逆にマイナス8mmとなっており、その分スイングアーム長が伸びています。ライダーからフロントタイヤが近く感じられるようになったことで、コーナリング時におけるフロントタイヤのグリップ感や路面からのインフォメーションが掴みやすくなっていると思われます。

また、倒立化されたフロントフォークのインナーチューブ径は45mmとなっており、プリロードを含む伸び圧減衰とあわせてフルアジャストが可能となっています。
技術説明で伺ったところによれば、43mm径も検討されたそうです。しかし、足回りの開発担当の方が「アフリカツインはオフロードバイクだから、45mmじゃなきゃダメなんです!」と熱く説得されたのだとか。その方、Bajaなどにも多数参戦されている、エンデューロ業界では『チカチカさん』の愛称で呼ばれるオフロードエンスージャスト。そういう方の熱意があって、エンジンを活かす車体設計が出来上がったと言えるでしょう。

その足回りが取り付けられる骨格であるメインフレームも、変形したオーバル形状となっており、RD07に対して縦方向でほぼ1.5倍の幅を持つ強靭なものとなりました。そのフレームにエンジンを固定するためハンガーは、なんと6箇所。それだけしっかりとしたフレーム部材だからこそ、前後フルアジャスタブルとされた足回りが素晴らしい仕事をしてくれるのだと思われます。

サスペンションストロークは、フロント230mm・リヤ220mm。ちなみに数値上ではありますが、KTM 1190ADV-Rのサスストロークは前後ともに220mm。この事から、今回のアフリカツインがどれだけオフロードパフォーマンスを重視したのかを、垣間見る事ができます。

このしどきのコースには、スタート直後に大坂上りがあり、そこも走らせていただきました。3速でそこそこ開けたつもりですが、途中にできた砂の轍を横切る際にも、ロング化されたスイングアームがしなやかに追従し、リヤ回りが暴れる事はほとんどありませんでした。

1段目を登ったところで右からショートカットして下りるコース設定とされていましたが、本来のコースであれば2段目を上りきるところでそこそこ飛べるレイアウトでしたので、是非ともそこをこのバイクで走ってみたかったところです。

途中でDCT車にも試乗できましたが、先般のレポートに書かせていただいたように、MT車と全く遜色なく走る事ができたのには大変驚きました。

(続く)

※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。