■新型アフリカツイン 試乗レポート
『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【5】
試乗記だけで簡潔に全てを伝えきれないのは、自分の未熟さゆえお許しを。
(そして、今回も長文です。読みづらくて申し訳有りません)
『RD07からの進化を、スペックデータから考察する』
一部は試乗記の中でもお伝えしましたが、RD07の生産終了から15年という時を経てリリースされた今回の新型は、全てにおいてアップデートがなされていると考えて差し支えないと思います。
自分、以前はカタログを眺めては馬力やらシート高など、数値を比較・検討して一人楽しむという、ありがちなスペックオタクでした。(一応過去形にしておきます)
ということで、今回のアフリカツインにおいてもスペックの数値からちょっと考察してみたいと思います。
まずスペックデータの最初に出てくる【型式】ですが、今回の新型は『SD04』。おや、どこかで聞いたことがありませんか?
そう、2型のアフリカツインの型式が『RD04』でしたので、それと一文字違いという何たる偶然。ちなみにホンダ車の型式番号は、最初のアルファベットは確か排気量区分だったかと思います。(『R』は750ccクラス、『S』は1000ccクラスだったはず)
そして、エンジン型式に至っては『SD04E』となっており、RD04・RD07に搭載されていた『RD04E』とこれまたそっくりです。
ニヤリとしてしまったのは、自分だけでは無いはず!と勝手に信じて次に進みます。
3寸法(全長・全幅・全高)と軸間距離については、いずれも新型が少しだけ大きくなっています。とはいえ、これは見た目ほどの違いはありません。
視覚的にそそり立つように見えるスクリーンですが、これはアッパーカウル前端部の位置が後退したことで、それに伴いスクリーンの角度が起きているため。
そして、最低地上高(グラウンドクリアランス)ですが、これがRD07の195mmに対して新型はなんと250mm!これにより、アンダーガードのグラウンドヒットや、フロントタイヤの巻き上げた石でアンダーガードが派手な音を奏でることも少し減るかもしれません。
シート高は同値の870mmですが、先日お伝えしたようにシート前端部がスリムになった新型は、さらに足付きが良くなっています。さらには工具無しで20mm下げることができるため、街中における足付きの不安感もさらに解消されることでしょう。
しかも!オプションではありますが、今回はさらに低いローシートも用意されており、ノーマルから30mmダウンとなります。一番低い状態では820mmとなることで、「これなら乗れるかも!」と思える方が多いに増えると思われます。
ちなみに比較としては、CRF250Lのシート高は875mm、ヤマハのセロー250では810mmとなっていますので、決してアフリカツインのシートが高いわけでは無い事がお分かりになるかと思います。
燃料消費率においては、60km/hの定置燃費ではRD07の25.2km/Lに対し、新型はなんと32.0km/Lと250ccの排気量拡大にもかかわらず、25%の燃費向上を果たしています。
そしてこの結果を受けて、フューエルタンク容量が23Lから18.8Lとサイズダウンしながらも、400kmの航続距離を確保しているのだそうです。(カタログ上は18Lと表記されていますが、開発者から欧州と同容量となる18.8Lと伺っています)
タイヤサイズは、フロントが90/90-21とRD07と同サイズですが、リヤが150/70R18と『オフロードバイク』としては一般的となるF21・R18インチとなっています。
標準装着のリヤタイヤはラジアルですが、前後共チューブタイプとなっています。
開発陣に「KTMの1190ADV-Rは同サイズでもチューブレスですが、なぜチューブタイプを採用したんですか?」と伺ったところ、「オフロードバイクだから、林道などでパンクした時にチューブの方が対処しやすい。また、山奥などでのパンクにおいても、チューブならばちゃんと帰ってこられる可能性が高いから。」なんだとか。一体、新型は我々をどこまで連れて行くつもりなのでしょうか。(笑)
いずれにしても、1990年頃にモトクロッサーのリヤタイヤが、軽快感やダイレクト感、トラクション向上などを求めて18インチから19インチにサイズアップされたように、今回の新型も17インチから18インチに変更されたことで、非常に軽快感のある走りが楽しめました。
90扁平の17インチだったRD07も、接地感の高さや乗り心地の良さというメリットを持っていたと思いますが、新型の現代的なハンドリングはこのタイヤサイズも一役買っていると考えて間違いないでしょう。
車両重量ですが、RD07では乾燥重量207kg、車両重量234kgでした。車両重量は、現在の装備重量と同じと考えてよいと思います。
そして新型ですが、MT車で232kg(!)、DCT車で242kg。驚いた事に装備重量ではRD07よりも軽いという衝撃の事実!もちろん、タンク容量の差もありますが、それでも「乾燥重量はほぼ同等である」と開発陣が話しておりました。
ちなみに、KTMで一番ホットなトラベルエンデューロである1190ADV-Rは、半乾燥重量で217kg。これには23Lの燃料は含んでおらず、ガソリンの比重が0.72?0.76であることを考えると、装備重量では233.56kgとなり、新型アフリカツイン(MT車)のほうが少しだけ軽い!という結果に。(ガソリン比重0.72として換算。23L×0.72=16.56kg)
もちろん、1190ADV-Rは150PSというハイパワーエンジンを搭載していますので、それを受け止める車体がアフリカツインより強靭であることは想像に難くありません。
とはいえ、「READY TO RACE」を標榜するメーカーのホットバージョンと同等の重量と考えただけで、ちょっとワクワクしてしまうのは恐らく自分だけではないでしょう。
最後に今回の新型において、自分的にかなり驚いたのは【変速機】です。
実はRD07の『5速』に対し、新型は『6速ミッション』を搭載してきたのです!
排気量拡大に伴いトルクが拡大されたことにより、ワイドレシオ化と同時に変速段数を減らす。実際、ヤマハのセローが225ccから250ccになった時に、ミッションが6速から5速とされています。しかし、段数が減ることでシフトダウンにおけるギア比の変動が大きくなり、林道や荒れた路面においてはリヤホイールのロックなどに気を遣うことにもなるかと思います。
事実、RD07の5速レシオもかなりワイドな設定となっており、オンオフタイヤでは林道などでリヤを振ってしまうことが少なからずあったとを記憶しています。(もちろん、自分の腕が未熟であることも大きいのですが。)
新型は6速ミッションとすることでギア比の変動幅を小さくし、さらにスリッパークラッチと組み合わせることで、リヤホイールをロックしにくく路面追従性を高めていることが考えられます。
タイヤがホッピングせずに路面に追従していれば、当然リヤブレーキの効力が効率的に減速へ繋がります。
そして、変速段数を増やしながらも、RD07とクランクケース幅を同サイズに収めてくれたことに、スペックオタク(笑)としては感動を禁じえませんでした。
いずれにしても、様々な進化を遂げているであろうことを、乗る前から妄想し続けておりましたので、今回の試乗会においてそれが確証に変わったことがとても嬉しかったです。
と、それを伝えたかったためだけに、ここまで長い駄文となってしまったことをお詫び申し上げます。
次回はもう少しコンパクトに。。。(反省)
(それでも続く)
※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。