「もちろんオンロードもイケるよね?」- 新型試乗レポート【4】


■新型アフリカツイン 試乗レポート
  『XRVオーナーは、新型にアフリカツインの夢を見るか?』【4】

no04-20160219

『オフロードバイク』ということで、ダートでの試乗記に熱くなり過ぎてしまった自分にちょっと反省。

「もちろんオンロードもイケるよね?」

オンロードでの試乗は、DCT車の割り当てでした。コースは、ここモトスポーツランドしどきをスタートして林道・県道を通り、高速道路を一区間走ってくるという1時間ほどのもの。
オフロードコースでの試乗ですっかりDCTに信頼をおいた自分は、モードセレクターを迷うことなく『Dモード』に。「オンロードでの試乗だから」ということで、トルコンは介入度の高い『レベル3』を選びました。
出発してすぐに鋭角に右へ折れると、すぐに林道に突入。てっきり舗装林道だと思っていたら、これがちゃんとダートでした。ヒルクライムということでスロットルを開けた瞬間に、トルコンがフル介入。(こればっかり) 今回も『レベル1』に介入度を下げました。

タイヤがオンロードを重視した標準装着品なので、ダートでの無理は禁物。しかしそういう時こそ、上りではトルコンが絶妙な効きを示してくれます。山の稜線に沿って緩やかにアップダウンを繰り替えすダートでも、DCTはそれを知っているかのように自然な制御をかけてきます。上りであればミッションをホールドし、下りに入れば自動的にシフトダウン。コーナー進入に向けてブレーキをかければ更にもう一段落とす。これほど走りに集中できるDCTは、先の分からないツーリングでこそ効果を発揮するものと思われます。ますますMT車を予約した自分の判断を少しばかり恨んでみたりもしますが、そこは『乗りこなす楽しみ』がたっぷり残されているとポジティブに捉えることにします。

閑話休題。
試乗車で転ぶのは絶対にマズイと考えていたので、林道でもABSを入れたままで問題ない速度で走っていました。しかし、右コーナーを曲がったところでそこに見えたのは、路面いっぱいに広がる雪と氷の世界。フロントのABSはカットできないので、前後ともABSが効きっぱなしでアイスバーンに突入。さすがに一瞬リヤが大きく振り出されて肝を冷やしましたが、左足で路面を蹴って姿勢を回復。事なきを得ました。ロング化されたスイングアームが、挙動を穏やかにしてくれたのでしょうか。そして、RD07と同じ870mmのシート高にもかかわらず、シート前部がスリムな形状となっているので足が付きやすかったことも功を奏した形です。

ちなみに、今回の新型はフロントブレーキにラジアルマウントの対向4ポッドキャリパーをダブルで備えています。組み合わせられたフローティングのブレーキローター径は310mmと、最新のロードバイクのコンポーネントに引けを取りません。にもかかわらず、ダートにおいても効き始めは非常に穏やかで、握るにしたがって効力が増してくるような設定になっています。これも、アフリカツイン用に専用チューニングされたものとのことで、ピストンシールなどに専用の味付けがなされているのだとか。どこまでも『オフロードバイク』として作りこまれた新型に、惚れ惚れとせずにはいられません。

林道を抜けて県道まで下りると、気持ちの良い中速コーナーを左右に切り替えしていきます。ここでも、フロントタイヤ位置がライダー側に近づいた恩恵として、非常に自然なハンドリングとフロントからのインフォメーションを感じることができます。従来21インチタイヤでは少し遠回りするような印象を持つこともありましたが、今回の新型のパッケージングがロードバイクほどクイックではないものの、それを自然に感じさせてくれるのだと思います。
ちょっとしたストレートでスロットルを大きく開けてみましたが、これがまた弾けるような速さです。まさかアフリカツインに乗っていて、ここまで『痛快な加速』を味わうことができるとは思いませんでした。ヘルメットの中で、思わず笑ってしまったのはここだけの話です。

また、新型は排気音がまた最高なのです。Vツインからパラレルツインになったにも関わらず、不等間隔爆発とすることにより、サイレンサーから吐き出される音は正にアフリカツインの『それ』。これだけでXRVオーナーであれば、思わず笑みがこぼれることでしょう。そして、サイレンサーエンドの位置がRD07よりも高く引き上げられたことで、より迫力のあるエキゾーストノートが楽しめます。
ちなみに、欧州向けのフルパワー98PSに対し、国内仕様は92PSと少々抑えられていますが、その味付けはサイレンサーの上下テールパイプ径を一回り絞っているからだとか。この差を体感できるとすればトップエンドのみで、中低速域に関してはフルパワー仕様となんら遜色は無い!と開発陣が太鼓判を押していた事をここに記しておきます。

実は試乗コースを間違えて、高速道路に乗り損ねてしまったのが心残りです。開発者から「新型の防風性能を是非体験してみて下さい!」と言われていたのですが、高速道路において試すことが出来ませんでした。県道のストレートで少し大きくスロットルを開けてみましたが、バイザーの付いたオフロードヘルメットでも一切振られることはありませんでした。もちろん完全に風を遮るのではなく適度に当たるのですが、スクリーン下部に空気の通気口を設け、スクリーン外側と内側の圧力差を少なくすることで、空気の流れを調整しているのだそうです。

夕方ともなれば2月の福島はさすがに寒く、モトクロスグローブで公道試乗に出てしまったことを激しく後悔しましたが、オプションのグリップヒーターが装着されていたことでとても助かりました。ホンダ純正用品であるこのグリップヒーターは、グリップ径が通常のグリップとあまり変わらないため、操作性を犠牲にしていないのが特徴です。贅沢を言ってしまえば、オフロードバイク用として、もう少し滑り止め効果の高いグリップパターンのものも用意されると良いと思います。とはいえ、擦り減ってしまった場合はヒーターユニット一体の交換となるので、コスト的に現実的ではありません。滑りにくさと耐摩耗性のバランスを考えたときには、現状のものがベストなのかも知れません。

無事に試乗車を返し終え、自分のような素人に対しても開発者の方々が様々に感想を聞いてきます。新型の素晴らしさに感動しっぱなしで特に不満などあろうはずもないのですが、なるべく多くの方に『わが子』の印象を聞かせてほしいのでしょう、そこに開発陣の新型に対する思い入れと愛を感じずにはいられませんでした。

今回の試乗会は、たまたま自分が日刊アフリカツインのメンバーとして参加させていただきましたが、皆様におかれましても何はともあれ一度はこの新型アフリカツインを体験されることを強くお勧めいたします。ご自身の『アフリカ愛』が深ければ深いほど、それに比例して感動の度合いが大きくなること間違いなしです。その上で、財布のひもが緩んでしまったり、ローン用紙に捺印するような結果になったとしても、当方は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承くださいませ。
ただし!試乗に当たっては、その誘惑を断ち切るには強い覚悟をもって臨む必要があることを、予めお伝えしておきます。

取り急ぎの試乗レポートとしては、今回にて終了となります。駄文ではありますが、最後までお読みいただきましたこと、心より御礼申し上げます。

(でも、まだ続く)

※このレポートは、あくまでも素人であるワタクシ内田による、試乗会における素直な感想と過去のアフリカツインや同カテゴリ他社車両を所有した経験からの考察を交えたものです。実際に新型を購入された方々が、異なる印象を持たれる場合も当然ございます。その点について、予めご容赦いただいた上で、一つの「読み物」として妄想を膨らませていただければ幸いです。